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佐木訴訟和解に関する当会見解


「ブッルクの会」代表の加藤俊和です。

 すでに、佐木理人さんご本人からお知らせがあり、報道機関からもニュースが配信されておりますように、佐木訴訟は和解が成立いたしました。
 以下に、佐木訴訟を支援してまいりましたブルックの会の見解を書かせていただきます。

 佐木訴訟は、6月30日、和解が成立しました。
 視覚障害者の歩行の自由と安全を考えるブッルクの会としての見解です。

 1995年10月、大阪市営地下鉄御堂筋線の天王寺駅ホームで全盲の佐木理人さんが電車に巻き込まれて線路に転落し命に関わるかと思われる重傷を負いました。しかし、大阪市営地下鉄はなんら誠意を示示すことがなかったので訴訟になりました。そして、第一審は思いもかけず敗訴となりました。

 しかし、佐木さんがなぜ事故にあったのか、その原因はどこにあるのかが十分に解明されておらず、しかもこのままでは、本人の不注意が原因であるかのようにすら思われてしまうため、佐木理人さんは控訴しました。

 控訴審では、視覚障害者には一人で歩く権利があること、間違ってホームの端にいったときに、高速で通過する電車から身を守るための柵すらなかったこと、また、これらの要求は佐木さんの事故より以前に身障者団体から出されていたこと、などが判明し、控訴審を闘ってまいりました。

 そして、裁判所から和解の道をを探ってはどうかとの打診があり、双方で検討を進めてまいりました結果、6月30日に和解が成立いたしました。既に報道もされていますが、和解の内容は次のとおりです。なお、分かりやすくするため、和解原文どおりではありませんがご了承下さい。

  1. 大阪市は、視覚障害者のホームからの転落事故等の発生防止を目的とし、今後とも視覚障害者にとって安全かつ利用しやすい駅を実現すべく努力する。


  2. 大阪市は、佐木理人に対し、本件の和解金として金300万円を平成15年7月31日までに支払う。

  3. 大阪市は、本和解成立後に、諸般の事情を考慮し、大阪市営地下鉄御堂筋線天王寺駅1番線ホーム東端部分に限り、別紙(省略)図記載の転落防止柵を設置する。


  4. 佐木理人は、その他の請求を放棄する。


  5. 佐木理人と大阪市は、本件に関し本和解条項に定める他、何らの債権債務のないことを相互に確認する。


  6. 訴訟費用は各自の負担とする。
以上です。

 さて、視覚障害者の歩行の自由と安全を考えるブッルクの会は、佐木理人さんを強く支援してまいりましたが、それでも一審が敗訴となったときには、絶望感すらただよいました。
 しかし、このままでは視覚障害者が一人で歩く権利はどうなるのか、安心して地下鉄を利用できないのではないのかという、ブルックの会会員をはじめ、大勢の方々のご支援によって、佐木理人さんは控訴いたしました。

 この控訴審の1年半余りの間も、いろいろな方々が証人として重要な証言をして下さり、法廷にはいつも大勢のみなさまが詰めかけて下さいました。このことが、佐木さんをはじめ、弁護団ににどれだけ大きな支えとなったか、大阪市に対しどれだけ圧力となったか測りしれません。また、団長の竹下義樹弁護士をはじめ、弁護団のみなさまがそれこそ夜遅くまで資料の準備に当たられていたことも忘れるわけにはいきません。

 いまここに、和解の日を迎えることができました。
 この6項目の条件に、少しものたりなく感じられる方もおられるかもわかりません。しかし、大阪市の努力目標を明確に提示させたこと、佐木さんの言い分を認めて、ここでは佐木さんの巻き込み転落のあった場所だけですが柵の設置が明示されたこと、そして、300万円の和解金を大阪市が支払うことなどは、事実上勝訴にも近い内容と評価できます。

 この佐木訴訟の結果によって、これからは大阪市営地下鉄はもとより、他の公共交通機関においても少なくとも危険な場所には柵の設置が必要になり、再びあってはなりませんが、万が一設置されないなど配慮がされていないところで事故が発生したら、今度は鉄道事業者の責任は以前にも増して免れないことにもなります。

 あらためて、ご支援下さいましたみなさまに心から御礼申し上げます。これからも、ブルックの会としても視覚障害者の歩行の自由と安全を目指してよりよい街作りのために活動していければと存じております。

 ご支援、本当にありがとうございました。

2003年6月30日
ブルックの会代表 加藤俊和


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