平成13年(ネ)第3719号損害賠償請求控訴事件 控訴人 佐木理人 被控訴人 大阪市 準備書面(14) 平成14年5月24日 大阪高等裁判所第6民事部D係御中 被控訴人訴訟代理人 弁護士 飯田俊二 同 川口俊之 第1 横浜市営地下鉄1号線・3号線における縁端警告ブロックの敷設、転落防止柵、立入禁止柵の設置状況 被控訴人は、平成14年5月9日横浜市営地下鉄1号線・3号線の各駅各ホームの実地調査を行った。その結果はつぎのとおりであった。 1. ホーム縁端警告ブロックは、ホーム縁端との間に80センチメートル以上の距離をおいて敷設されているか。 80センチメートル以下の70ないし72センチメートルの距離をおいているにすぎないホームが16ホーム見られた。 他のホームは80センチメートルの距離が置かれていた。 2. ホーム縁端警告ブロックは、ホーム終端部において端部まで直線にて敷設されているか、それとも線路と反対側に屈曲又は囲い込み敷設されているか。 ほとんどの駅において、囲い込み敷設されている。 端部まで直線敷設されているのは、舞岡駅湘南台方面行きホームの後部(乙第81号証の77写真)、関内駅湘南台方面行きホームの前部・後部の3ヶ所だけであった(同第81号証の34、35、36、37写真)。 横浜市営地下鉄は、ホーム終端部において縁端警告ブロックを終端部まで直線延長敷設するより、囲い込み敷設するほうが視覚障害者に対するより適切な警告になると考えているようである。 3. ホーム縁端警告ブロックは、何センチ角のブロックが敷設されているか。 すべて、30センチメートル角のブロックが敷設されていた。 4. ホーム終端部の縁端警告ブロック屈曲部の内角にもう一枚の警告ブロックが敷設されているか。 内角部にもう1枚の警告ブロックの敷設はなされていなかった(同第81号証の2、5、8写真)。 5. ホーム終端部近くのホーム縁端に転落防止柵の設置の有無等 (1)ホーム終端部近くのホーム縁端に転落防止柵が設置されているか。 転落防止柵が設置されているのは、関内駅だけであり(同第81号証の34と40写真)、他の駅には設置されていなかった(同第81号証のその他の写真)。 但し、あざみ野方面行きホームの後部には、転落防止柵はなかった。なお、関内駅は、地下2層式となっており、地下1階は湘南台行きホーム地下2階はあざみ野行きホームとなっている。あざみ野行きホームのうち1面は乗降に利用されておらないので、ホームの終端から終端まで転落防止柵が設置されている。 (2)転落防止柵が設置されている場合列車の停止位置から転落防止柵までの距離。 @前部 関内駅湘南台方面行きホームは6メートル(同第81号証の35、36、37写真) 関内駅あざみ野方面行きホームは8.1メートル(同第81号証の38、39、40写真) A後部 関内駅湘南台方面行きホームは3.9メートル(同第81号証の34写真) (3)転落防止柵設置の有無及び距離は、横浜市営地下鉄においてもホームの形状、ホーム上の施設の有無・種類、列車の停止性能、時間帯別列車車両数、乗客数、乗客の移動方向、ラッシュ時の円滑な旅客の乗降等を考慮して決めているものと思われる。 上記の事情を無視して論じることはできないのである。 6.ホーム終端部に立入禁止柵の設置の有無等。 (1)ホーム終端部に立入禁止柵が設置されているか。 ほぼ全ての駅で設置されている。(同第81号証の1〜88写真) (2)列車の停止位置から立入禁止柵端までの距離。 @前部 桜木町駅あざみ野方面行きホームの4.8メートルが最短であり(同第81号証の33写真)、他はすべて6メートル以上である。 A後部 蒔田駅あざみ野方面行きホームと桜木町駅あざみ野方面行きホームの3メートルが最短であり(同第81号証の32写真)、他はそれよりも長くなっている。 (3)立入禁止柵設置の有無及び距離も、上記転落防止柵のそれと同様ホームの形状、ホーム上の施設の有無・種類、列車の停止性能、時間帯別列車車両数、乗客数、乗客の移動方向、ラッシュ時の円滑な旅客の乗降等を考慮して決めているものと思われる。 上記の事情を無視して一律に論じることはできないのである。 (乙第78号証地下鉄路線図) (乙第79号証地下鉄時刻表) (乙第80号証1号線・3号線一覧表) (乙第81号証1〜88写真) 第2 名古屋市営地下鉄東山線における縁端警告ブロックの敷設、転落防止柵、立入禁止柵の設置状況 被控訴人は、平成14年5月10日名古屋市営地下鉄各駅各ホームの実地調査を行った。その結果はつぎのとおりであった。 1. ホーム縁端警告ブロックは、ホーム縁端との間に80センチメートル以上の距離をおいて敷設されているか。 藤が丘駅が74センチメートルであるが(乙第85号証の1、2、3、4写真)、他はすべて80センチメートル以上の距離をおいて敷設されていた。 2. ホーム縁端警告ブロックは、ホーム終端部において端部まで直線にて敷設されているか、それとも線路と反対側に屈曲又は囲い込み敷設されているか。 すべてホーム終端部まで直線敷設されていた。 これからみると、名古屋市営地下鉄は、横浜市営地下鉄とは反対に、ホーム終端部において縁端警告ブロックを囲い込み敷設するより、終端部まで直線延長敷設するほうが視覚障害者に対するより適切な警告になると考えているようである。 3. ホーム縁端警告ブロックは、何センチ角のブロックが敷設されているか。 本山駅が20センチメートル角のブロックになっている(乙第85号証の26写真)他は、すべて30センチメートル角のブロックであった。 4. ホーム終端部の縁端警告ブロック屈曲部の内角にもう一枚の警告ブロックが敷設されているか。 直接敷設されているので屈曲部はなく、もう一枚の警告ブロックの敷設もなかった。 5. ホーム終端部近くのホーム縁端に転落防止柵の設置の有無等。 (1)ホーム終端部近くのホーム縁端に転落防止柵が設置されているか。 転落防止柵が設置されているのは、以下の4駅の6ホームだけであり、他の駅ホームには設置がなかった。 名古屋駅高畑方面行きホームの後部 同駅藤が丘方面行きホームの後部(同第85号証の58写真) 伏見駅藤が丘方面行きホームの前部 栄駅高畑方面行きホームの前部・後部(同第85号証の54、56写真) 同駅藤が丘方面行きホームの前部・後部 新栄駅藤が丘方面行きホームの前部(同第85号証の51写真) (2)列車の停止位置から転落防止柵端までの距離。 @前部 伏見駅藤が丘方面行きホームは4.5メートル 栄駅高畑方面行きホームは3.3メートル(同第85号証の56写真) 同駅藤が丘方面行きホームは3メートル 新栄駅藤が丘方面行きホームは6.3メートル(同第85号証の51写真) A後部 名古屋駅高畑方面行きホームは0.6メートル 同駅藤が丘方面行きホームは0メートル 栄駅高畑方面行きホームは1メートル(同第85号証の54、55写真) 同駅藤が丘方面行きホームは5.7メートル (3)転落防止柵設置の有無及び距離は、名古屋市営地下鉄においても横浜市営地下鉄と同様に、ホームの形状、ホーム上の施設の有無・種類、列車の停止性能、時間帯別列車車両数、乗客数、乗客の移動方向、ラッシュ時の円滑な旅客の乗降等を考慮して決めているものと思われる。 6.ホーム終端部に立入禁止柵の設置の有無等。 (1)ホーム終端部に立入禁止柵が設置されているか。 以下の駅ホームに立入禁止柵の設置はなく、その他駅ホームにはすべて立入禁止柵が設置されていた。 名古屋駅高畑方面行きホームの後部 同駅藤が丘方面行きホームの後部(同第85号証の58写真) 伏見駅藤が丘方面行きホームの前部 栄駅高畑方面行きホームの前部・後部(同第85号証の54、55、56写真) 同駅藤が丘方面行きホームの前部・後部 新栄駅藤が丘方面行きホームの前部(同第85号証の51写真) 千種駅高畑方面行きホームの後部 同駅藤が丘方面行きホームの前部 池下駅高畑方面行きホームの後部 同駅藤が丘方面行きホームの前部 本山駅高畑方面行きホームの前部 同駅藤が丘方面行きホームの前部 東山駅高畑方面行きホームの後部 (2)列車の停止位置から立入禁止柵端までの距離。 @前部 名古屋駅高畑方面行きホームが2.4メートル(同第85号証の59写真)、覚王寺駅藤が丘方面行きホームが3.6メートルになっている(同第85号証の34写真)他は、すべて4.5メートル以上となっている。 A後部 東山駅藤が丘方面行きホームが1.4メートル、伏見駅高畑方面行きホームが1.8メートルである他はすべて3メートル以上となっている。 (3)立入禁止柵の設置の有無及び距離についても、転落防止柵と同様に、ホームの形状、ホーム上の施設の有無・種類、列車の停止性能、時間帯別列車車両数、乗客数、乗客の移動方向、ラッシュ時の円滑な旅客の乗降等を考慮して決めているものと思われる。 (乙第82号証地下鉄路線図) (乙第83号証地下鉄時刻表) (乙第84号証東山線一覧表) (乙第85号証1〜59写真) 第3 大阪市営地下鉄と横浜市営地下鉄・名古屋市営地下鉄の比較 大阪市営地下鉄の本件事故当時(平成7年10月21日)の縁端警告ブロックの敷設状況・転落防止柵の設置状況・立入禁止柵の設置状況は、横浜市営地下鉄・名古屋市営地下鉄の現在(平成14年5月9日、同10日)のそれらと比較して決して劣っているものではない。 以上