平成一一年(ワ)第三六三八号損害賠償請求事件                              原 告 佐 木 理 人                              被 告 大  阪  市 平成一二年四月一〇日                            被告訴訟代理人                              弁護士 飯 田 俊 二                               同  川 口 俊 之 大 阪 地 方 裁 判 所   第一七民事部イ係 御中                  準 備 書 面(四) 第一、 他鉄道の駅の縁端警告ブロック並びに転落防止柵の設置状況。 被告は、東京都の地下鉄である東京都営地下鉄と帝都高速度 交通営団の駅のうち、一日の乗降客の多い上位一〇駅につ いて三回に亘って現地調査を実施した。 第一回と第二回の調査では、主に、  「転落防止柵が設置されているか、設置されていないか」  「列車の先頭停止位置から転落防止柵等までの距離がどの   くらいあるか」  「ホームの終端が壁になっているのか、階段になっている   のか等の状況」 について調査し(乙第三一号証、乙第三二号証)、 第三回目の調査では、主に、  「敷設されているホーム縁端警告ブロックの大きさ」  「ホーム縁端からホーム縁端警告ブロックまでどのくらい   の距離を置いて敷設されているか」  「ホーム縁端警告ブロックがホーム終端付近で屈曲する場   合に、その内角にもう一枚警告ブロックが敷設されてい   るか」 を調査した(乙第三三号証、乙第三四号証)。 その結果は、次のとおりである。 一、 東京都営地下鉄の一日の乗降客の多い駅一〇駅(乙第二九号   証)の縁端警告ブロックの敷設状況並びに転落防止柵の設置   状況。 (一)ホーム縁端警告ブロックは、ホーム縁端部との間に八〇セン    チメートル以上の距離をおいて敷設されているか。    調査した範囲では、すべて八〇センチメートルの距離をおい て敷設され、多くは一〇〇センチメートル以上の距離をおい て敷設されていた(乙第三三号証)。 ホーム縁端部から八〇センチメートル以上の距離をおいてホ ーム縁端警告ブロックを敷設することに主眼を置いているた め、ホーム上の柱や壁との間隔が極端に狭くなっている個所 もみられる(No17,No18)。 大阪市地下鉄の場合には、視覚障害者がホーム上の柱や壁と 衝突することを避けるため、ホーム縁端警告ブロックを少し ホーム縁端方向にずらし、ホーム縁端部から八〇センチメー トルを置かずにホーム縁端警告ブロックを敷設している場合 がある。 (二)ホーム終端部において、ホーム縁端警告ブロックは囲い込み    又は線路反対側に屈曲して敷設されているか。    調査した範囲では、すべて線路の反対側に屈曲して敷設され    ている(乙第三一号証No87〜130)。 (三)ホーム縁端警告ブロックは、何センチ角のブロックが敷設さ    れているか。    三〇センチメートル角のブロックが敷設されている(乙第    三三号証)。 (四)ホーム終端部のホーム縁端警告ブロック屈曲部の内角にもう  一枚の警告ブロックが敷設されているか。 調査した範囲では、ホーム縁端警告ブロックの屈曲部にもう 一枚の警告ブロックが敷設されているものはなかった(乙第 三三号証)。 (五)ホーム終端近くのホーム縁端に転落防止柵が設置されている か。 調査した四四ヶ所のうち、三三ヶ所にはまったく転落防止柵 は設置されていなかった(乙第三一号証No87〜130)。 そのうちには、ホーム終端にエレベーター、エスカレーター や階段があるので、大阪市地下鉄の転落防止柵設置の基準で は、転落防止柵を設けることになる箇所にも設けられていな かったものもある (乙第三一号証No87,90,94,95,98,115,116,117,118,124,125,127,128,129,130)。 列車の先頭停止位置より六メートル以上も間隔があり、大阪 市地下鉄の基準では、転落防止柵を設けることになる箇所に も転落防止柵が設置されていないところもあった(乙第三一 号証No99,101,103,105,109,113,114,123,125)。 また、設置されている転落防止柵もほとんど名ばかりの転落 防止柵で、線路との並行した長さがなく、実質的には立入禁 止柵と考えてもよいものも多く見受けられた(乙第三一号証 No91,92,93,107,108,109,110,119,120,121,122)。 なお、三田線大手町駅には、取り外し容易な縦棒にひもをは ってあるのが見受けられ、時間帯により連結車輛数が異なり、 プラットホームの有効長が定かでないために、ラッシュ時の 連結車輛数の多いときには、右縦棒とひもを取り外して、プ ラットホームの有効長を長くとり、他の時にはそれらを設置 して有効長を短くする方法がとられているのではないかと思 われる(乙第三一号証No127,128,129,130)。 二、 首都圏の地下鉄である帝都高速度交通営団の主な一〇駅のホ    ーム縁端警告ブロックの敷設状況並びに転落防止柵の設置状    況。 帝都高速度交通営団のうち、一日の乗降客数の最も多い駅か ら上位一〇駅につき調査した(乙第三〇号証)。 (一) ホーム縁端警告ブロックは、ホーム縁端部との間に八〇セン チメートル以上の距離をおいて敷設されているか。 調査した範囲では、すべて九〇センチメートル以上の距離を おいて敷設されていた(乙第三四号証)。 九〇センチメートル以上の距離をおいて敷設されているが、 ホーム上の柱によってホーム縁端警告ブロックが連続を失い 途切れているものが見られる (乙第三一号証No133,137,140,142,144,145,146,148,161,162, 165,166,167,176,178,179,188,189,192,201)。 また、連続していても縁端警告ブロックの一部がホーム上の 柱のために欠けているものも見られる(乙第三二号証No199)。 帝都高速度交通営団では、ホーム縁端部から九〇センチメー トル以上の距離を置いてホーム縁端警告ブロックを敷設する ことを主たる眼目とし、歩行している視覚障害者が同ブロッ クが途切れていることから同ブロックを触知しそこなう危険 や柱に衝突する危険の回避を従たる眼目としていることが窺 われる。 大阪市地下鉄は、視覚障害者がホーム縁端警告ブロックを触 知しそこなうことがないように、直線で連続を保って敷設す ること、及び視覚障害者がホーム上の柱や階段に衝突するこ とがないよう敷設することも勘案して、ホーム縁端部からの 距離を置くことを幾分控えることにより、線路への転落、列 車との接触の危険回避とホーム上の柱・階段への衝突の危険 回避とを微妙に調整しているのである。 帝都高速度交通営団の方針も、大阪市地下鉄の方針も、いず れもそれなりの合理性があるものと考えられる。 (二) ホーム終端部